2009-09-10

汚染浄化の進展遅い 苛立つベトナム

遅れるアメリカのダイオキシン除去作戦の資金投下:ヴェトナム
戦争中の枯れ葉剤エージェント・オレンジで汚染されている空港地区周辺の浄化のためのアメリカ資金供給が遅れていると、ベトナム政府高官が9月8日に語りました。前々から危惧されてきたことで、今に始まったことではありません。
明らかにしたのは、ベトナム政府の資源環境省グエン・スアン・クオン副大臣です。同副大臣は、エージェント・オレンジとガン誘発剤のダイオキシンに関する米越年次会合で、アメリカの動きに業を煮やして発言したのではないかと推測します。
ダナン空港周

クオン副大臣の発言は、こう言いました。「米国政府からの約束された資金供給は、行われなかった。ダナン空港は、アメリカ軍がエージェント・オレンジを貯蔵し、戦時の枯れ葉作戦のために飛行機に積み込んだところだが、そのダナン空港の汚染の除去をする共同のプロジェクトチームはわれわれの期待に添わなかった」

しかし、アメリカのマイケル・ミカラク駐越大使は、会合で、「金額は認められた。そして、契約は空港における環境アセスメントと改善予備の作業を行うための契約はまもなく発表される」と、語ったようです。

われわれ支援隊のVAVA訪問時にも話が出ましたが、ダナン空港は、フーカット空港(Phu Cat=クイニョンに近いビンディン省の空港です)、ビエンホア空港とともに、いずれも旧アメリカ軍基地ですが、ダイオキシンの3大汚染地区の1つなっています。

ヴェトナム側の要請で、アメリカは浄化の援助をダナン空港に集中させる計画です。。
オバマ大統領は、今年、ダイオキシン浄化とダイオキシン関連医療活動のために、これまでの倍の600万ドルを支援する法案に署名しました。

ダナン空港周辺の住宅地

「われわれは、口先だけではない。具体的なプロジェクトに一緒に取り組んでいる。昨年のJAC会合以来、米国はダナン地域の障害者の援助を開始し、6月には双方が、“バイオレメディエーション”(ダナン空港でダイオキシンを破壊するために生物学的有機体を使用する)の試験実施を始めました。これが成功すれば、バイオレメディエーションは、ダイオキシン浄化の革新的手法であり、費用効果がよく、良い解決法になる」と、ミカラク大使が、合同諮問委員会(JAC)で語りました。この会合は本日9月10日まで続けられます。

確かにアメリカは少し動き始めたと言えます。大きな国。動き方も遅いですが、安心はできませんが、車輪が動き始めた感じがします。オバマ大統領の訪越時に、また正義の声をぶつけることです。

ヴェトナム側は、多数の出生時奇形はダイオキシンのせいであり、アメリカ軍の枯れ葉剤撒布で、およそ300万人が被害者になったと主張している。その主張は、おそらく間違っていないと思います。

コン副大臣は、双方に大して、犠牲者の苦しみに対処するために、長期的プロジェクトを確立するよう要請しました。主張しました。米国は、エージェント・オレンジとヴェトナムの障害・奇形の関連性を確立する国際的に容認された科学研究は、これまでにないというスタンスをとってきています。

バイオレメディエーションについて、ちょっと書いておきましょう。

これは、微生物や植物による環境浄化のことを言っています。。 人間の健康や環境を損なう有害な重金属や有機化合物により汚染された環境を、生物の力で無害なバイオマスや炭酸ガス、メタン、水、無機物に変換し汚染環境を改善(remediation)する技術のことです。

微生物利用には、バイオ・オーギュメンテーション法とバイオ・スティミュレーション法に大別されます。

アメリカの大使も言っているように、環境浄化方法の中でもコスト安です。そして、二次的な環境負担も少ないのです。 バイオレメディエーションには、掘削なしにはアクセス不能な区域に採用できる多くのコスト上および効率上の利点があります。 例えば、石油などの漏出やある種の塩素系溶剤が地下水を汚染する場合があり、適切な電子受容体あるいは電子供与体改良剤の導入は、順化に要する一定のタイムラグの後、汚染物質濃度をかなり減少させることが出来ます。

これは掘削とその後の別の場所への投棄や焼却処理やその他の「施設型」処理法に比べはるかに安上がりであり、炭化水素が地下水を汚染した場所で一般的に行われている「汲み上げ処理」の必要性を大きく下げることができます。

ダナン空港周辺の汚染地区の土壌をどこかに持っていって焼却処理することは不可能であり、また、その地域を住民を集団以上させることも、全く不可能です。その点でも、バイオレメディエーションは、機能すれば合理的と言えます。アメリカは安い方法をとったけれど、それなりに理にかなっているといえるのではないでしょうか。ただ、早くやってあげることが肝要ですね。

ダナン空港の滑走路

日本の研究開発分野では、トリクロロエチレンなどの揮発性有機化合物による地下水汚染において、分解微生物の浄化作用の調査が行われ、遺伝子組換え技術を用いた研究では、水銀の除去に関与している遺伝子を環境中に生息している微生物に導入した組換え微生物の開発やPCB(ポリ塩化ビフェニル)やダイオキシン類の分解菌の研究など、汚染物質を分解できる有用微生物について、生態系への影響を含めた研究が進んでいます。
また、植物を栽培して有害なカドミウムや残留性有機汚染物質(POPs)を吸収・除去させるなどの環境浄化(ファイトレメディエーション)の研究も進んできました。

自然界で作用しているバイオレメディエーションと
ファイトレメディエーションPhytoremediation)は目新しいことではなく、古来の技術です。

バイオレメディエーション(bioremediation)は
微生物菌類植物、あるいはそれらの酵素を用いて有害物質で汚染された土壌の状態)を、有害物質を含まない元の状態に戻すことです。典型例は、劣化した有機塩素化合物のような特定の土壌汚染物質を、微生物によって処理する場合です。

例えばファイトレメディエーションによる農地の塩分除去などは古くからの方法です。 微生物を用いたバイオレメディエーション技術はジョージ・M・ロビンソンが初めて包括的に紹介したものです。彼はカリフォルニア州サンタマリアの石油エンジニア助手、1960年代の空き時間を汚らしい壺や様々な微生物の混合物と過ごしたと言われます。

しかしながら、全ての汚染物質が微生物を用いたバイオレメディエーションによって容易に処理できるわけではないようです。ダナン空港など3大汚染地区で機能する事を祈りたいと思います。
Posted by Picasa

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