上の写真は、ホーチミン市のトゥーズー病院に保存されている奇形胎児。 ある若き女医さんが、研究のためと、後世のためになると、せっせと集めたものです。その収集の大変さと保管の苦労について、彼女はほとんど封印したままです。ほんとうは、もっと数が多かったのです。なぜ?という純粋な医師の心で、足を運んで集めたものなのです。同病院の医者は、戦争中のエージェント・オレンジの使用が、高い奇形の発生率を生んだと指摘しています。
今回は、12月19日付けのタイム誌の記事を引用します。完全ではないですが、いろいろの考えの違いを浮き彫りにしています。
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エージェント・オレンジの毒 ヴェトナムの新世代をも脅かす(上)
アメリカが放棄したダナン空軍基地の孤立した一区画は、かつてアメリカの空軍兵士と兵器で埋まっていたところだ。オレンジ色のストライプが付けられた巨大なドラムス缶が保存されていたのが、そこである。そして、ドラム缶の中に詰められていた除草剤は調合されて、待機中の飛行機に積まれた。外へはねたものは、土中にしみ込み、実際給水系統にまで入り込んだ。30年後に、この旧米空軍基地を訪れた珍客には、ゴム長と防護服が与えられている。敵(北村註:北の軍隊、解放戦線部隊を指す)の軍隊から天蓋のジャングルを剥ぎ取るために撒布されたエージェント・オレンジは、猛毒のまま残留しており、この一区画はベトナムで最も汚染された不動産と考えられている。最近の研究では、終戦後30年たってさえ、発癌性ダイオキシンは、安全基準の300~400倍高いことを示しているのだ。
何年も会議を重ねた末、調印をし、マスコミ向けのポーズを取って、アメリカはエージェント・オレンジの暗黒の遺産を継続して管理する姿勢の一環として、12月16日にヴェトナムで、もう一つの式典を開き、もう一つの覚書に署名した。それでも、不満はある。 —もし 何かあるとすれば — それは最も汚染されている土地を浄化は、まだ何もなされていないということだ。2007年以来、アメリカ議会はヴェトナムでのエージェント・オレンジ対策費として、合計600万ドルを割り当てた。その金額は、問題の表面を掘り始めたり、国中の何トンという有毒な土壌の除去作業を始めるためだけでなく、その資金がどのように費やされているかという疑問がある。そして、いくつかの団体も、お金は、新世代のダイオキシン曝露防止対策を実行するよりも、むしろ、そもそも問題を調査して、コンサルタントを雇用するためのものであると認識しており、不満を募らせている。
「あの地域に住んでいる人には、依然として危険がある」と言うのは、バンクーバーに本社を置くハットフィールド・コンサルタント社のトーマス・ボアヴァン社長だ。同社は、1994年以降ヴェトナムのエージェント・オレンジ汚染の確認と測定を行ってきた環境調査会社だ。良い知らせは、たとえば、南部ヴェトナム領土の10%にもダイオキシンが撒布されたとしても、ほんの一握りの重度の汚染地区―そのすべては枯れ葉剤を調合し貯蔵していたアメリカ軍の軍事施設である―だけが人体に危険となっているだけだ、ということを、ハットフィールド社の研究が 示しているということだ。悪い知らせ? 「もしそれらがカナダやアメリカにあったなら、彼らは即時の除去作業を要求するだろう」と、ボアヴァン社長は言った。
アメリカは援助の支払いを故意に長引かせているという不満に答えて(北村註:この件は以前のブログでも報告した)、駐ヴェトナムのマイケル・ミカラク米大使は、ハノイで調印式の後で次のように語った。「ごく最近ダナン空軍基地の環境アセスメントを実行するために割り当てられた170万ドルは、アメリカとベトナムの法律を遵守して使用され、汚染地区の浄化に対する必要な一歩である。我々は、多くの有望な技術を調査中である。正しい方向で仕事をするためには、注意深い研究が必要である。我々は、ダイオキシンが土壌の中にあるということは知っている。しかし、それを取り除くために、どんな方法を使用すべきか?作業員に どこを掘れと指示するのか? それは、過程の中の次の段階だ」
しかし、アメリカを批判する人たちは、潜在的に高くつく訴訟を避けるために、人々の死を待っているのだ、などと言って、アメリカが厳しい待機戦術をしていると思っている。現在2つの戦争に携わっている国にとって、戦時損害賠償に対する包括的な責任を認めることは、高価な先例を作りかねない。「彼らは、問題が何であるか、そして、それがどこに横たわっているか、分かっている。なぜ、彼らはいま環境影響評価を必要としているか?彼らは、死ぬほどそれについて勉強しているのだ」と、チャック・サーシー(VVMFヴェトナム退役軍人記念財団アメリカ代表)は言う。
科学者は、1960年代以降ダイオキシンについて警報を出していた。TCDD(エージェント・オレンジの中のダイオキシンのこと)がガンと先天性欠損症を引き起こすとわかったあと、米環境保護局(EPA)は、1979年に除草剤使用の緊急禁止令を出した。エージェント・オレンジの最大手メーカーであったダウとモンサントは、結局、それが1961年から1971年まで戦時中の枯れ葉剤として使用された間、エージェント・オレンジに曝露した米兵に、損害賠償として数百万を拠出した。アメリカ政府は、ヴェトナムで従軍した元兵士に、障害手当てとして、毎年、いまだ数10億ドルも払っている。 —それらの支払いには、ダイオキシン関連のガンからの苦しみと先天性欠損症に苦しむ多くの二世が含まれている。そして、この10月に、復員軍人省は、白血病、パーキンソン病、稀有の心臓病をエージェント・オレンジ関連の健康障害リストに加えた(北村註:以前のブログに掲載済み)。それでも、米政府当局者は、枯れ葉剤に曝露した何百万ものベトナム人とその子どもの間に、枯れ葉剤が健康障害を引き起こしたという決定的証拠はないと主張している。(つづく)
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