2007-08-09

この2年のうごき (上)

①ベトナム側枯れ葉剤訴訟 棄却 2005年3月10日 

ベトナム戦争中にアメリカ軍が使用した枯れ葉剤で、先天的欠損症や流産、ガンを引き起こしたとし、ベトナム側原告は、これを製造した企業を提訴して賠償を求めていたが、ニューヨークの連邦裁判所は、2005年3月、この訴訟を棄却した。原告たちは、枯れ葉剤が戦争中、隠れ蓑となる森林をはぎとるための枯れ葉剤の使用は、数百万人に対する戦争犯罪であるとしていた。
 ジャック・ウェインステイン判事は、原告の申し立てに対する法的根拠は全くないと裁決した。この民事訴訟は、ベトナムの原告が、糖尿病を初めとする、さまざまな健康障害の原因とされているエージェント・オレンジの影響に対する賠償請求する初の訴訟であったが、化学薬品会社はそのような関連性は立証されていないと主張した。

 ダウ・ケミカルモンサント社などの被告化学薬品会社側は、また、化学剤の使用法に関しては米政府に責任があり、メーカー側にはないと主張し、アメリカの法廷も、最高司令官としての権限を行使する大統領の命令を実行した企業を処罰することはできないという判断を示した。

 233頁に及ぶ判決文の中で、ウェインステイン判事は、「いかなる国の国内法、あるいはいかなる国際法のもとでも、原告の申し立てのいずれにも根拠となるものはない」として、訴訟を退けた。アメリカ司法省は、連邦判事に訴訟を却下するよう促していた。

 司法省は、1月に提出された弁論趣意書の中で、旧敵から提訴されて開廷することは、大統領の戦争遂行権限に対して危険な脅威を与えるものだと申し立てた。

 1962年から1971年にかけて、北ベトナム共産軍から森林の天蓋を奪うため、ベトナムの諸地方に大量の枯葉剤エージェント・オレンジが撒布された。1984年に、化学薬品会社数社は、枯れ葉剤に曝露したため健康が損なわれたとするアメリカの退役軍人たちとの訴訟を示談に持ち込み、1億8千万ドルを支払った。

 アメリカ政府は、枯葉剤の化学的結果についての証明が不十分であるとして、その責任を否定している。

 ジャック・B・ウェインステイン判事の背景を書いておこう。
1921年生まれで、出生地はアーカンソー州です。ドイツ系の名前だ。ウェインスタインとは、英語でワイン・ストーンを意味する。ニューヨーク東部地区の連邦裁判所判事だ。

ウェインステイン氏は、1967年にリンドン・ジョンソン大統領に指名されて判事になる。

1980年から1988年まで、彼は、地区の首席判事を務める。1993年に、上級判事となったが、他の上級判事と違って、相変わらず首席判事か、それ以上の力を維持する。長年勤続、重責と博識の故に、彼は最も有名な連邦判事の一人である。だが、いわば冷戦時代の思考をもった判事とも言えるのではないだろうか。

②米政府:エージェント・オレンジ被害者への賠償はしない 2006年6月5日

アメリカはエージェント・オレンジ被害者への賠償はしないが、戦争中の枯れ葉剤に対する治療法に関するアドバイスはする。アメリカのラムズフェルド国防相(当時)のベトナム訪問時に、アメリカ政府高官はこう語った。
ラムズフェルド国防相周辺の人は、ラムズフェルド国防相は、ファム・ヴァン・チャ越国防相やベトナム人民軍幹部と会談した際に、ベトナム側は、ダイオキシン曝露とエージェント・オレンジ汚染の問題を提起した、という。

「われわれに出来ることは、科学的情報、われわれが持っている歴史的資料、その状況への対処法に関する技術的アドバイスを提供することだ。われわれは、もっと協力する用意がある。われわれは、専門家レベルの会合を開き、われわれに何が出来るかを話し合うことで合意した」と、側近の人は語った。

アメリカ軍は、戦争中、北ベトナム軍や解放戦線から森林の天蓋をはぎとり、食糧用の穀物を破壊するために、ベトナム南部で、致命的な化学剤ダイオキシンを含んだエージェント・オレンジを広範に撒布した。

ベトナム側は、その化学剤使用の結果として、何百万という人々が多種の疾病や先天的欠損症に悩んできたと主張している。

ニューヨークの連邦裁判所は、2005年に、ベトナム人被害者がモンサントやダウ・ケミカルなどを相手に起こした裁判を棄却した。

また、4月に訪越したジェームズ・ニコルソンアメリカ復員軍人相に、アメリカはダイオキシンの関連した健康障害をおこした元軍人に補償しているのに、なぜベトナム側の被害者にはしないのかとベトナム側報道陣から質問を受けたのだが、返事は・・・。
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