2009-12-24

蓮の花奨学生からの便り(1)

今回から数回にわたって、今年ベトナムでベトナム支援隊が贈呈した蓮の花奨学金を受けた奨学生からの手紙をご紹介します。
イヴにはとても辛い話ですが、一番最初は、休学せざるを得なくなった女生徒の苦渋の手紙です。世の中は、クリスマスイヴです。世間的には、うきうきし、華やかな気持ちなる日。しかし、金融不況をまともに受けた世界には、そんな華やいだ雰囲気に微塵も浸れない若き精鋭がいるのです。まずは、読んでください。きれいな字で書かれていました。(北村 記)
三田村さんから奨学金を受けるグエン・ティ・トー・クエンさん
おじさま、おばさま お元気ですか?
  皆様の健康を何時も祈っています。会の皆様はじめベトナムを愛してくれている日本人に感謝しています。特に三田村さんには、感謝しています。
  悩んだ末に手紙を書くことにしました。私は一年間休学する事を決めた事に対して申し訳なく思っています。一年間休学して、働かなくてはならなくなりました。その仕事は、人の家で家事の手伝いをする仕事です。 毎月の給料は50万ドンです。
  私の家族は経済的にとても苦しいのです。父親は私が生まれて一ヶ月で家を出て行って以来、家に戻って来ていません。母親は枯れ葉剤の影響で足を失くしました。私には高校へ通っている兄がいます。家族は私を学校へ通わせる情況ではないのです。
  会から頂いたお金はとっても有難いと思っていますが、学校へ通い続けるには、それでは足りません。そのために、一年間休学する事にしました。
トークエンさんの手紙1ページ目
この手紙が皆様の所へ届いた頃には多分、私はクアンガイを離れているでしょう。
遠くまで行って仕事をしなければなりません。

より明るい将来の為に真面目に勉強をして働く事をお約束いたします。
最後にもう一度、静岡の皆様に心から感謝の気持ちをお伝えします。
私のように困っている大勢の子供達を助けて頂く事を願っています。
近いうちにまたお会いする事を願っています。
かしこ

(静岡在住 ヴィンさん訳 2009.12.22 ご協力ありがとうございました。)
花の挿絵が描かれた2ページ目
【下は、クエンさんの奨学金申請書です】
ベトナム社会主義共和国
国立・自由・幸福
申請書
静岡のボランティアグループへ、
私はNguyen Thi To Quyen(グエン・ティ・トー・クエン)です。
1991年生まれです。
住所:クアンガイ省トゥーギア郡ギアタン村字アンクー
現在、トゥーギア高校の3年生です。
彼女の成績表は、ここに物理的に載せられません。一番成績のいい科目はコンピューターでした。

母はHuynh Thi Lai(フイン・ティ・ライ) 枯葉剤被害者です。
クアンガイダイオキシン協会、静岡ボランティアグループの皆様に 勉強のために奨学金を申請いたします。
いい人になるように勉強に頑張ります。
ありがとうございます。
2009年10月26日
Nguyen Thi To Quyen
Nguyen Thi To QuyenはHuynh Thi Lai(
枯れ葉剤被害者)の子供であることを証明します。
検討をよろしくお願いします。
2009年10月27日
枯葉剤被害者協会
【北村註:トゥーギア郡は、省都クアンガイ市を取り囲む郡ですが、ギアタン村は市の北西にあります】
右下にグエン・ティ・トー・クエンの名前がみえます。
8月20日、VAVA(クアンガイ省枯れ葉剤被害者協会)で贈呈式を終えて、真っ先に私が駆け寄ったのが、このトー・クエンさんでした。贈呈式中も、常に何かさびしさを湛えている様で気になり、激励の意味で家内と写真に収めたり、宮尾会長とも並んで写真を写しました。学費どころではなくて、結局は生活費に消えてしまったのですね。私たちは、また、一つ教訓を得ました。
Posted by Picasa
彼女の行き先は、すばりホーチミン市と思います。経済的に豊かになっている人が多く、夫婦共稼ぎで、子どもの面倒をみてもらいたいからでしょう。しかし、月給50万ドンは、食事つきの住み込みにしても、米ドルにして月30ドル弱(円ドル換算すれば、2700円です。良い雇い主にめぐり合い、こき使われないように祈りたいと思います。
何回か、ブログで書きましたが、ベトナムの一部役人から私に非難の声が寄せられているようです。1箇所に長い時間を費やす・・と。この贈呈式に使った時間は、たったの1時間半弱です。十分に話を聞く時間がないのです。それでも、私は抵抗を受けながらも、なんとか、時間を取ったつもりです。奨学生の話を私達が聞かなくても、べトナム側が生徒のことを十分知っているかというと、そうではありません。彼らにも、十分な時間がないからです。ならば、こういう機会にゆっくりと懇談の時間を取るべきだと思うのです。
とても、いい教訓を得ました。ベトナム側の基本姿勢は、常に短時間で、たくさんの援助を・・、なのです。それに反対ではありません。大賛成です。しかし、それは、出来る団体がやれば良いと思います。心にひっかかるものがあれば、じっくり聴く・・・出来うる限り、細かいことも吸い上げていくべきだ・・・トー・クエンさんのケースがそれだったと、今、私は猛省しています。それは一瞬の判断をおろそかにしたからだった。やはり、役人には安易に迎合すべきではない、のです。
トー・クエンさんには、何とか復学してほしいと思います。家庭の状況は、明日の勉強より、今日のご飯です。しかし、将来の安定した生活には、学問や資格は欠かせません。

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