予備の洗浄作業が続く間、カイさんのいう野菜に限って言えば、限られた危険しかないと、外国人専門家とベトナム人専門家は指摘する。
しかし、空軍基地の近くの住民はより一般的なダイオキシンの危険にさらされていると、内外の専門家は主張する。内外の専門家は、どのくらい多くの人がこの汚染から危険にさらされているかについて正確に言えないが、カナダのハットフィールド社の調査では、旧空軍基地の北部と東側の近くの住民のダイオキシン・レベルが高くなっていることが分かった。
「我々は、国際的にも、この物質が原因であるということで、意見が一致している」と、ハノイ駐在国連機関のダイオキシン問題顧問コース・ニーフジェス氏は言っている。
カイさん(76)は、心配には無頓着だ。
「ここには、汚染問題などないよ。私は、まだ生きてるもん」と、長くここに住むカイさんは言う。
ベトナム戦争中、アメリカ軍は、ダナンを初め他の基地で、エージェント・オレンジを保管していた。それらの基地で、落葉作戦任務のために飛行する軍用機に積まれたのだ。
「枯れ葉剤が撒布されたジャングル域には、今日高レベルのダイオキシンは存在しない」と言うのは、ヴェトナムで長年ダイオキシン汚染調査をしてきたハットフィールド・コンサルタント社のトーマス・ボイヴィン氏(カナダの環境調査会社社長)だ。
しかし、米越当局は、ダナン空港の旧アメリカ軍基地の部分、サイゴンに近いビエンホア空港、そしてフーカット空港を重大な汚染地と特定した。それらでは、化学物質の漏洩、航空機の洗浄、枯れ葉剤の飛行機への積載などが、汚染に大きく結びついている。
現在ダナン空港では、ダイオキシン濃度は国際的に容認されたレベルの300-400倍高いと、ボイヴィン社長は明らかにした。
ほぼ2年前、ベトナム当局は、アメリカの支援を受けて、かつてエージェント・オレンジを配合し、積載した場所にコンクリートをかぶせた。そして、ダナン空軍基地内の排水設備と、湖の沈殿物のフィルター施設を改善した。
ベトナム当局も、住民に対して、旧アメリカ軍基地の湖にいる魚や他の食物を摂取することを禁じた。
これらの当面の対策は、汚染の拡大を防止したと、米越両国の当局者は言う。
被害地はベトナム人民軍の管理下に置かれている所であり、ベトナム当局が観光地として力を入れたいヴェトナムの4位の大都市ダナンの空港ターミナル・ビルとは離れている。
しかし、「更なる対策を講じない限り、これら重度汚染地域に残された化学物質は、水の流れ、野生生物、大気だけでなく、土壌の粒子を通して拡散し続けるだろう」と、ニーフジェス氏は、9月の米越合同諮問委員会で話した。
ダイオキシンは、魚または鳥を通して食物連鎖で広がっていくのだ。
他の支援国もベトナムを援助しているが、ヴェトナムの要請で、アメリカはダナン地域にその援助を集中させている。
米国の当局は、「複雑で政治的に微妙な問題があり、米越間だけでなく、アメリカ政府内でもコンセンサスを必要とした」とAFPに語った。
「われわれはこのプロジェクトに取り組むために、間違いなく、出来るだけ迅速に作業してきた」と、ベトナム政府の高級幹部が、米国の資金が迅速に支払われていないと不満を述べた後、マイケル・ミカラク駐ハノイ大使は反論した。
「バイオテクノロジーか他の方法か、いずれかで汚染除去をやるにしても、その前に浄化作業には、汚染土壌を埋め立て地の方へ動かす必要がある。旧3基地すべての汚染除去には、およそ6000万ドルかもっとかかることになる」 ヒエン氏は、AFPとのインタビューで、こう話し、アメリカからさらなる資金提供を要求した。
「われわれは、アメリカにもっと努力してもらいたい」と、ヒエン氏は言った。
ミカラク大使は、汚染除去費用が最終的にどのくらいかかるかを言うには、まだ早すぎると反論した。
二国間会議のレ・ケ・ソン共同議長は、大使の考えに同意し、「例えば、ビエン・ホア空港の汚染の範囲は、当初考えらていたより大きく、新たな研究を必要とする」と言った。
ベトナム戦争は1975年に終結したが、アメリカとヴェトナムが国交正常化を果たしたのが、1995年だった。それから12年後に、ダイオキシン被害緩和と医療活動のための300万ドルの拠出をアメリカが承認し、アメリカの方針が汚染除去の支援へ変換を遂げたのだ、と複数のアメリカ当局者は語る。
オバマ大統領は、今年、その援助を二倍の600万ドルまでにする法案に署名した。
ヴェトナムは多数の出生奇形の原因はダイオキシンだとしている。
ホアン・ティ・テーさん(71)は、ダナン空港近くに住む未亡人だ。彼女は「600万ドルについては何も知らないが、障害をもった自分の子供たちのためにアメリカが資金提供して欲しい」と言った。
彼女は、口を開けたまま、空ろな目をして座っている息子のチャン・ドゥック・ギアさん(35)の壊れた車椅子を、まるで守るように片手を置いたままだった。彼の姉チャン・ティ・ティー・ガさん(31)は、首の周りに汗をにじませて、歩行器にしがみついていた。
子ども達は、生まれた頃は正常だったという。医者は、テーさんに、子供たちは、エージェント・オレンジの被害者だと告げた。
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