2009-11-17

ニューヨーク・タイムズの記事から

今回は、相前後しますが、ベトナム人被害者に触れていないと指摘された10月12日付けのニューヨーク・タイムズのジェームズ・ダオ記者の記事を訳してみました。
Door Opens to Health Claims Tied to Agent Orange
エージェント・オレンジ関連疾病に門戸を開く・・という見出しです。

今週(註:とっくに過ぎた話ですが)提案される新規則の下で、復員軍人省はパーキンソン病、虚血性心疾患と有毛細胞性白血病の3疾病を、ベトナムで広範に使用された有毒枯れ葉剤、エージェント・オレンジに起因したと想定される疾病リストに加えることになった。

この新方針で、これらの病気がベトナム従軍中の直接の結果だったと主張する何千もの復員軍人にとってはかなり安堵となる。そして、それにより、彼らが復員軍人省から毎月の障害者診療と医療検診治療をスムーズに受けられる道を開くものだ。
新方針はベトナム戦争中にヴェトナムに派遣された復員軍人、1970年にアメリカ軍がエージェント・オレンジ使用中止した後ベトナムに派遣された復員軍人を含めて、約210万人の適用される。そして、復員軍人省はエージェント・オレンジが海軍兵士に与えた影響も調査する計画だが、この新方針は、深海船の船員には適用されない。
この変更は、病気になったり、障害を起こした旧兵士の軍人手当申請の支障を減らすために、アメリカ軍元参謀長であり、ベトナム退役軍人であったエリック・シンセキ復員軍人省長官の努力に負うところは大きい。復員軍人省は、障害申請後の審査に時間がかかりすぎるとし、議会や旧軍人団体から厳しい批判を受けていた。
2型糖尿病のグエン・チュン・フォンさん

「長官就任以来、私は我々がなぜ、エージェント・オレンジがヴェトナムで最後に使われて40年も経っているのに、戦場に従軍した我々の軍人に健康障害を決めかねているのか、私はしばしば尋ものだ。多数の健康問題を抱えている復員軍人は、ちょうど良い潮時の決定を受ける必要がある」と、シンセキ長官は声明で述べた。

復員軍人省は、ホジキン病、前立腺ガンと2型糖尿病を含む13の疾病をすでにヴェトナムでエージェント・オレンジに曝露した結果の関連病と推定し、認めている。
そのリストに載っていない疾病に関しては、復員軍人は従軍と病気との直接的な関連証拠の提出を求められており、しばしば証拠提出は、申請受理の拒否と長期の裁判につながっている。

復員軍人省は、この新方針によって、およそ20万人の復員軍人が温駅を受けることになると推定している。しかし、復員軍人省は、新方針が承認を受け、最終文書として発表されるまでは数カ月がかかりそうで、新方針によって医療費がどのくらいかかるか費用の算定は出来ないと言っている。

シンセキ長官の決定は、復員軍人省に、パーキンソン病、虚血性心臓病と高血圧を、エージェント・オレンジ関連の疾病リストに加えるよう働きかけてきたアメリカ・ベトナム復員兵協会のような団体の勝利である。

しかし、新しい方針は、また、連邦政府が肉体的、精神的な問題が広がりつつある年老いた復員軍人の補償や看護にどこまで責任をとらなければならないかという議論を促しそうでもある。


3つの疾病の中で最も一般的な虚血性心疾患は、心臓への血液の流れを制限し、心筋の不整脈と悪化を引き起こす。(北村註:よく聞かれる「心筋梗塞」や「狭心症」をまとめて「虚血性心疾患」という。「虚血」とは「血がない状態」を意味する。つまり心臓に十分血がいきわたっていない状態が「虚血性心疾患」だ。動脈硬化で冠動脈の内側が狭くなったり血管のけいれんが原因で、血液が十分に心臓の筋肉(心筋)にいきわたらなくなったとき、心臓は酸欠(虚血)状態となり、胸痛などの症状としてあらわれる。)

パーキンソン病は、ドーパミン(脳内ホルモンの一つで、中枢神経系に存在する神経伝達物質。アドレナリン、ノルアドレナリンの前駆体でもある。運動調節、ホルモン調節、快の感情、意欲、学習などに関わる)を分泌する細胞の喪失と関係している。患者は、振るえ、姿勢の硬直化、バランスが崩れる、運動を始めることが出来ないなどの問題が起きてくる。
有毛様細胞白血病はよりまれな疾病だが、成長の遅いガンで、骨髄が感染症と戦う健康な白血球、赤血球と血小板に群がる細胞、リンパ球をあまりに多くの生産してしまうもの。

エージェント・オレンジ(貯蔵ドラム缶に色分けされた色の帯から名づけられたもの)は、ジャングルの天蓋を剥ぎ取り、収穫を破壊するために、ヴェトナムで使用された最も一般的な除草剤だった。それには、最も有毒のダイオキシンを含んでおり、それが、その後一部のガンと関連してきた。
シンセキ長官の決定は、この7月に出された医学研究所の報告書の影響を受けたと、側近は言う。同研究所の報告書では、ベトナム退役軍人で除草剤への露出と、パーキンソン病と虚血性心疾患の発症率の高さとの関連が、「限定されたか、きわどい証拠」を発見したとしている。そして、同報告書は、除草剤と毛様細胞白血病の間の関係についても、「十分な証拠」(より強いカテゴリー)を見つけたとしている。

被害者2世のキム・ダインさん(クアンガイ省で)
同研究所が指名した14人の委員によって執筆された報告書は、科学的文献に基づてかかれたものだ。同研究所は、議会によってヴェトナムで使われた除草剤の健康的な影響を監視し、2年おきに最新版を発表するよ、議会から求められている。
その報告書では、委員はベトナム退役軍人については疫学的データが不足していると警告している。その結果、 その調査結果は、除草剤とパーキンソン病、除草剤と虚血性心疾患について「確たる結論」を出していないと、委員会は述べた。復員軍人がどちらの病気を発症する可能性を推定することができなかったと、委員会は述べている。

それらの警告を出したにもかかわらず、医学研究所報告は、復員軍人擁護団体からは、従来の方針転換を正当化するに十分な証拠を提供したものと評価された。復員軍人へのエージェント・オレンジ政策を規定している法律のもとでは、復員軍人省は、科学的な証拠だけに基づく決定だけで、費用に関する手当ての決定を下すことはできない。シンセキ長官の側近は、医学研究所の報告書がその証拠を提供したと語っている。

一部の医師や研究者は、エージェント・オレンジの手当ての拡大は、ベトナム戦争退役軍人の研究の不足から生じた貧弱、あるいは確定的でない科学に基づいたもの主張している。それら懐疑論者は、前立腺ガンまたは2型糖尿病のような病気は、まさにエージェント・オレンジへの暴露と同じように、老化、ライフスタイルの変化、または遺伝子的疾病素質の結果であると主張している。(了)Posted by Picasa

2009-11-13

目の前の犯罪に目をつぶること

今日は、フィラデルフィアを拠点とするデイヴ・リンドーフ記者がパブリック・レコード紙(10月15日付け)に書いた記事を訳しました。一部意訳してあります。非常に重要な視点・指摘が含まれています。私も勉強になりました。核兵器と同様に、人類最強のダイオキシンを含んだ枯れ葉剤、エージェント・オレンジは、奪命者である魔の働きをもっています。日本に実際撒布されていたら、今ののほほんとした平和など存在はしなかったでしょう。原爆が落とされた上に、枯れ葉剤が撒布されていたら、どうなっていたでしょうか。アメリカ軍部の戦争法律論で守られた感じの日本ですが、次の格好の目的地がベトナムだったのでしょうか。そして、その時、法律論で反対を唱える人はアメリカ軍部にいなかったのでしょうか。
そして、この記事に対して、先刻ご紹介した英越友好協会レン・アルディス事務局長の意見が載せられていますが、それは、後日掲載することにします。

『ヴェトナムのエージェント・オレンジ:目の前の犯罪を無視すること』 これが記事の見出しになっており、記事は以下です。
10月13日に、ニューヨークタイムズ紙は、『エージェント・オレンジ関連の疾病にさらに門戸を開く』と題した新しいニュースを掲載した。そして、それはインドシナ戦争(ベトナム戦争のこと)に従軍した多くのアメリカ復員軍人にとってよい知らせであることは確実だった。それは、アメリカ国防総省が致命的なダイオキシン入りの除草剤/枯葉剤を南ベトナムの広範囲の領土に撒布するのをやめて38年後に、すでに認められた13症状に、さらにパーキンソン病、虚血性心臓病、有毛細胞白血病という恐怖の3疾病も枯れ葉剤が原因だから追加してほしいという復員軍人の長い間の要求をアメリカ政府は認めたと、ニューヨーク・タイムズ紙は報告している。
新しい政策の下で、復員軍人省はまもなく、エージェント・オレンジへの暴露で発症した可能性のある210万人のヴェトナム戦争復員軍人に無料で治療を始めることになる。

これは、復員兵に直接の被害を引き起こし、しばしば第2世代第3世代にも被害を及ぼしてきたアメリカの政府の責任を国防総省と復員軍人省に認めさせるというベトナム戦争復員兵が10年20年にわたり長く苦闘してきたなかで、遅ればせながらの前進である。人に知られる最も有毒物質の1つであるダイオキシンは、多くの重い全身性疾患、自己免疫疾患、ガンと先天性欠損症を引き起こすことは、つとに知られている。このことは、爆弾、砲弾、銃弾に劣化ウランの使用が一般化しており、戦場に於ける有毒物の使用によって生ずる他の疾病への国防総省と政府の取り組みへの警告ともなっている。そしてそれは軍隊と一般人に対する健康被害への懸念不足、軍隊への情報非公開と最終的な被害者への病状手当ての否定などが、国防総省、政府の特徴となっている。)
タイ・ティ・ガーさん16歳

軍事問題担当のジェームズ・ダオ記者は、このまったく惨めな物語を通して政府が果たしてきた妨害者としての役割に言及したのだが、タイムズ記事の中で没になったのは、ベトナムにははるかに多いエージェント・オレンジの犠牲者の存在していることについて触れた部分だった。実際、有毒化学物質が、ベトナム人の頭に、そして大地にと落とされたわけだし、または、アメリカがしたことに対するいかなる責任でも認めることに対して米国政府はかたくなに拒絶してきたことをきじにしてあったのだった。

記事によると、復員軍人省は、エージェント・オレンジ関連疾患を持つ人は、20万人にも達する恐れがあると推測する。しかし、ベトナム人被害者の裁判によると、アメリカ復員軍人やその子ども達と同じ症状に苦しんでいるベトナム人は少なくとも300万人、あるいはおそらく480万人もの被害者がいるというが、この主張は根拠がないと、一連邦地裁判事は一蹴した。

ベトナム南部では、現在80万人ものベトナム人が。自身、またはその両親、あるいは祖父母のいずれかのエージェント・オレンジ曝露によって、慢性の健康障害問題で苦しんでいると推定されている。大部分のこれらの被害者のほとんどの人は、一部は発達遅滞がみられ、他には、歩行不能、手が使えなかったりしており、恒常的に世話を必要としている。

ヴェトナム戦争の元従軍兵を中心とした組織である『平和を求める復員軍人』は、アメリカが健康管理、教育、職業教育、恒常的な介護、在宅療養、ベトナムのダイオキシンの汚染地区を浄化する機材のための資金を提供する呼びかけた。この呼びかけを、議会とホワイトハウスは一貫して無視した。試験では、旧南ベトナムにあった元アメリカ軍3基地の周辺のダイオキシン・レベルは安全とされるレベルの3~400倍もあることが判明している。アメリカは、ベトナム軍がアメリカ軍基地に接近するために使っていらジャングルは枯らすために、基地周辺の何マイルにも多量のエージェント・オレンジを遺棄した。しかし、アメリカ軍の撤退時には、浄化作業は行われなかった。

元軍医や従軍後医師になった元兵士を含むアメリカ軍の復員軍人のある組織が、”ベトナム友好村事業アメリカ社”である。この事業が、エージェント・オレンジの被害者の剤の犠牲者を支援するために、ベトナムでの社会を確立するために資金を集める。

ガーさんは歌が上手だ

太平洋戦争突入の数年後に日本で一般市民を目標にしてアメリカが2つの原爆を投下したことを考えると、この行為は、感傷的な挑戦のように見えるかもしれない。しかし、第二次世界大戦に戻って、太平洋戦争中の最も凄惨な島潰し作戦の最中に、ペンタゴンのある法務官は、太平洋の日本諸島の日本人に対して除草剤を使用許可を求める軍の要請は、ハーグ議定書(現在のジュネーブ協定の前身)の下で違法であると裁定した。

法務官は、日本の軍への糧食を絶つために日本列島で一般人の糧食まで破壊する試みは、戦争犯罪であると採決した。日本軍はシベリアで軍の番犬を殺すためにストリキニーネを用いて戦時国際法をすでに破っていたので、それが違法であっても、アメリカは進軍する自由があると主張して、米国は進軍し、いずれにしろ除草剤を使用した。戦争のルールの下では、一方が規則を破れば、他方はもはやそれに束縛されない。

しかし、ベトコンも北ベトナム軍も、アメリカ軍と南ベトナム軍に対して有毒物質を一度も使用したことはなかった。そして、ヴェトナム戦争では、国防総省は、140万エーカー(ベトナムの総陸地面積の12%、旧南ベトナムのほぼ25%の領土)以上に強度の有毒物質を撒布することが戦争犯罪になるかどうかは、一度も考えなかった。

さらに言えば、国防総省は、大規模な枯れ葉剤作戦を開始する前に、エージェント・オレンジが致命的なダイオキシンが含まれていることを示す研究があることを承知していた。しかし、それらの研究をすっかり隠蔽していた。ダウケミカルとモンサントなどメーカーである化学会社の研究を隠蔽した。そして、毎日その物質を扱う軍隊や、あるいは濃密に撒布された地域で戦闘するために派遣された軍隊にさえ、警告したことは一度もなかった。
一国を丸裸にするためにアメリカ軍がエージェント・オレンジを犯罪的に使用したことに起因するヴェトナムで進行中の医学的災害は、ノーベル平和賞を授賞することになったオバマ大統領にとっては、格好の問題になるだろう。リチャード・ニクソン大統領は最終的に戦争終了後の和平会談で、ヴェトナムに数10億ドルの復興支援を提供する約束したが、ニクソンは大統領はすぐ約束を反故にした。オバマ大統領は、最終的には壊された約束を再生することで、自身の平和攻勢を開始することができるかもしれない。戦後、そのような復興援助は、1ドルも(ベトナムに)供与されたことがない。

訪日経験があるガーさん 日本の歌も
ダオ記者は言った。「新たな3つの疾病をエージェント・オレンジ関連と認定する軍人復員省の決定について、ベトナムのダイオキシン被害者への重要性に言及しなかった。なぜなら、”私の主眼は復員軍人だったから”、そして、もう一つは、この記事を800文字でまとめなければならなかったからだ」と。そのことは真実かもしれないが、ベトナム人(被害者)に1行触れる価値があったことは確かだ。しかし、遡ってタイムズ紙が、ダオ記者ではなく、ジェイニ―・ローバー記者名で、パーキンソン病、虚血性心疾患と白血病はエージェント・オレンジ関連疾患であるとする全米医学研究所の専門家会合での所見の記事を載せた7月25日にも、ベトナム人犠牲者には触れずじまいだった。軍人復員省の最近の決定は、それを基にしているものなのだ。この場合、それが新しい医学的発見についてであり、復員軍人の治療に関する政策決定ではないので、この過ちは単にジャーナリスト的に許しがたいものであった。
この点で、ニューヨークタイムズ紙がこの話題に関してジャーナリストとしての評判を救済できる唯一の方法は、ダオ記者、ローバー記者、あるいは他の記者に、アメリカが使用したエージェント・オレンジのヴェトナム人への影響について少しでも記事を書かせることにある。彼らは、『平和を求める復員軍人』または『ヴェトナム友好村事業アメリカ社』の復員軍人に電話をしてきじをかくことが出来たはずだ。
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オバマ大統領の今回の訪日で、結局広島、長崎の訪問は実現せず、任期中のいつかへと期待をつなぐ結果になった。
「ノーモア・ヒロシマ・ナガサキ」の声に浴びせられるような、侵略した報いとの“因果応報論”は、ベトナム戦争にはない。ベトナムはアメリカを侵略していない。ベトナム戦争を終わらせるためだったとの“枯れ葉剤必要悪論”も、ベトナム戦争にはない。
ベトナムの多くの被害者の願いは、枯れ葉剤撒布の責任追及より、正義を認めてほしいという点に絞られて来ているようにも思う。だが、この厚い壁を乗り越えるには、猛毒ダイオキシンの使用を、生命次元から断罪する思想が不可欠である。
「世界には二つの力しかない、すなわち剣と精神とである」「ついには、剣は常に精神によって打ち破られる」との言葉を発したのはナポレオンであった。 
いま苦しさにあえいでいるベトナムの人々が存命のうちに、正義を認める道は、オバマ大統領の登場で微かではあるが、現実の期待となってきた。すべての原点は、人間にある。この大統領の時に・・という時期を好機に出来ないものか。(この項終わり)Posted by Picasa

2009-11-09

枯れ葉剤被害の遺産を抱える米 越

ハットフィールド社(3) エージェント・オレンジの遺産を抱える米 越
最終回の3回目は、ダナン空港周辺のダイオキシンレベルの高さに触れながら、どういう問題があるのかを、AFPニュースの報道を訳しながら、報告しましょう。
【ダナン】マイカイは満足げにジャガイモとメロンを栽培している。それも、高度に汚染されていると専門家が指摘する旧米軍基地ダナン空港を取り囲むように立つ古いレンガ塀にへばりつくようなすぐそばで、だ。
米軍が潜在的に発癌性ダイオキシンを含むエージェント・オレンジと他の除草剤の戦時撒布を中止して40年近く経とうとしている。アメリカとベトナム両国の当局は、協力して、ダナン空港で予備の浄化作戦を行っている。
しかし、全面的な汚染除去作業はまだ始まっていないが、それも何年かかるかわからない。
下の写真は現ダナン空港です。中央は、戦闘機の格納庫です。


予備の洗浄作業が続く間、カイさんのいう野菜に限って言えば、限られた危険しかないと、外国人専門家とベトナム人専門家は指摘する。

しかし、空軍基地の近くの住民はより一般的なダイオキシンの危険にさらされていると、内外の専門家は主張する。内外の専門家は、どのくらい多くの人がこの汚染から危険にさらされているかについて正確に言えないが、カナダのハットフィールド社の調査では、旧空軍基地の北部と東側の近くの住民のダイオキシン・レベルが高くなっていることが分かった。

「我々は、国際的にも、この物質が原因であるということで、意見が一致している」と、ハノイ駐在国連機関のダイオキシン問題顧問コース・ニーフジェス氏は言っている。

カイさん(76)は、心配には無頓着だ。
「ここには、汚染問題などないよ。私は、まだ生きてるもん」と、長くここに住むカイさんは言う。

土壌を採取する科学者(ハットフィールド社撮影)

ベトナム戦争中、アメリカ軍は、ダナンを初め他の基地で、エージェント・オレンジを保管していた。それらの基地で、落葉作戦任務のために飛行する軍用機に積まれたのだ。

「枯れ葉剤が撒布されたジャングル域には、今日高レベルのダイオキシンは存在しない」と言うのは、ヴェトナムで長年ダイオキシン汚染調査をしてきたハットフィールド・コンサルタント社のトーマス・ボイヴィン氏(カナダの環境調査会社社長)だ。

しかし、米越当局は、ダナン空港の旧アメリカ軍基地の部分、サイゴンに近いビエンホア空港、そしてフーカット空港を重大な汚染地と特定した。それらでは、化学物質の漏洩、航空機の洗浄、枯れ葉剤の飛行機への積載などが、汚染に大きく結びついている。

現在ダナン空港では、ダイオキシン濃度は国際的に容認されたレベルの300-400倍高いと、ボイヴィン社長は明らかにした。

ほぼ2年前、ベトナム当局は、アメリカの支援を受けて、かつてエージェント・オレンジを配合し、積載した場所にコンクリートをかぶせた。そして、ダナン空軍基地内の排水設備と、湖の沈殿物のフィルター施設を改善した。

空港北部で食用の野菜をとる住民(ハットフィールド社撮影)

ベトナム当局も、住民に対して、旧アメリカ軍基地の湖にいる魚や他の食物を摂取することを禁じた。

これらの当面の対策は、汚染の拡大を防止したと、米越両国の当局者は言う。

被害地はベトナム人民軍の管理下に置かれている所であり、ベトナム当局が観光地として力を入れたいヴェトナムの4位の大都市ダナンの空港ターミナル・ビルとは離れている。

しかし、「更なる対策を講じない限り、これら重度汚染地域に残された化学物質は、水の流れ、野生生物、大気だけでなく、土壌の粒子を通して拡散し続けるだろう」と、ニーフジェス氏は、9月の米越合同諮問委員会で話した。

ダイオキシンは、魚または鳥を通して食物連鎖で広がっていくのだ。


他の支援国もベトナムを援助しているが、ヴェトナムの要請で、アメリカはダナン地域にその援助を集中させている。

米国の当局は、「複雑で政治的に微妙な問題があり、米越間だけでなく、アメリカ政府内でもコンセンサスを必要とした」とAFPに語った。

「われわれはこのプロジェクトに取り組むために、間違いなく、出来るだけ迅速に作業してきた」と、ベトナム政府の高級幹部が、米国の資金が迅速に支払われていないと不満を述べた後、マイケル・ミカラク駐ハノイ大使は反論した。

ダナン空港南側から北へアプローチする飛行機から撮影
ダナン地域における環境アセスメントと除去予備事業として、入札は受けられ、契約はまもなく発表される、とミカラク大使は言った。6月には、両国は、”バイオレメディエーション”(ダイオキシンを破壊する生物学的有機体の使用)の試験実施を始めている。(註:9月10日のブログを『汚染浄化の進展遅い 苛立つベトナム』ご覧頂くことをお勧めします)

エージェント・オレンジの汚染問題を担当しているベトナム33委員会事務所長ライ・ミン・ヒエン氏は、こう語る。

「バイオテクノロジーか他の方法か、いずれかで汚染除去をやるにしても、その前に浄化作業には、汚染土壌を埋め立て地の方へ動かす必要がある。旧3基地すべての汚染除去には、およそ6000万ドルかもっとかかることになる」 ヒエン氏は、AFPとのインタビューで、こう話し、アメリカからさらなる資金提供を要求した。

「われわれは、アメリカにもっと努力してもらいたい」と、ヒエン氏は言った。

ミカラク大使は、汚染除去費用が最終的にどのくらいかかるかを言うには、まだ早すぎると反論した。

二国間会議のレ・ケ・ソン共同議長は、大使の考えに同意し、「例えば、ビエン・ホア空港の汚染の範囲は、当初考えらていたより大きく、新たな研究を必要とする」と言った。

ベトナム戦争は1975年に終結したが、アメリカとヴェトナムが国交正常化を果たしたのが、1995年だった。それから12年後に、ダイオキシン被害緩和と医療活動のための300万ドルの拠出をアメリカが承認し、アメリカの方針が汚染除去の支援へ変換を遂げたのだ、と複数のアメリカ当局者は語る。

オバマ大統領は、今年、その援助を二倍の600万ドルまでにする法案に署名した。
ヴェトナムは多数の出生奇形の原因はダイオキシンだとしている。
しかし、アメリカはエージェント・オレンジとヴェトナム人障害者や奇形との関連を確立する国際的に認められた科学的研究はないと主張して、未だに平行線をたどる。

ホアン・ティ・テーさん(71)は、ダナン空港近くに住む未亡人だ。彼女は「600万ドルについては何も知らないが、障害をもった自分の子供たちのためにアメリカが資金提供して欲しい」と言った。

彼女は、口を開けたまま、空ろな目をして座っている息子のチャン・ドゥック・ギアさん(35)の壊れた車椅子を、まるで守るように片手を置いたままだった。彼の姉チャン・ティ・ティー・ガさん(31)は、首の周りに汗をにじませて、歩行器にしがみついていた。

子ども達は、生まれた頃は正常だったという。医者は、テーさんに、子供たちは、エージェント・オレンジの被害者だと告げた。

「エージェント・オレンジが貯蔵されていたか、撒布された場所の近くで住んでいたことがあるなら、枯れ葉剤の毒素の被害を受けているかもしれないと、私は言われた。戦争中は、飛行機が飛び立っていった音を覚えている。その飛行機がエージェント・オレンジを運んでいたのか知らない」と、テーさんは言った。(終わり)Posted by Picasa

2009-11-08

汚染続くベトナム南部

今回は、ハットフィールド社の地味ながら、大きな進展を示した調査にお知らせしましょう。日本では、どこも報道していないので、書いておきましょう。支援を続ける私達にも、元気を与えるものです。
ハットフィールド社は、大きな貢献をしたと確信します。つまり、いろいろといい逃れた北アメリカ政府及びアメリカ軍の外堀は完全に埋められたということです。

ハットフィールド社(2) ベトナム南部を汚染し続ける
エージェント・オレンジの毒素
ハットフィールド社の新たな研究の結果は、ベトナム戦争の最後の弾が発射されて30年以上たっても、ベトナム戦争中にアメリカ軍が使用した除草剤が環境を汚染し続け、健康に脅威をもたらし続けていることを示している。
1961年~1971年の間に、アメリカ軍は、当時の南ベトナムに1900万ガロン以上の除草剤を撒布し、密生したマングローブの森と3倍の天蓋となっていたジャングルに枯葉剤を撒布することで、敵の農作物を破壊し、捉えどころのない敵の覆いをはがし獲った。
その除草剤のいくつかが、今こそTCDD(ダイオキシン)として知られているが、ダイオキシンという非常に強度な毒素を含んでいたということは、当時ほとんどの人が知らなかった。エージェント・オレンジはTCDDに汚染され数多くの除草剤の中でももっと多用されたもので、そのエージェントオレンジのような混合物質を製造中に、TCDDは意図しない副産物として作られたのだった。(北村註:ここは大事なところです)
採決を受けるダナン空港付近の住民(ハットフィールド社撮影)
カナダのハットフィールド社の環境科学者が、先週(9月初旬)研究結果を提出した。それは除草剤に含まれた高いレベルのTCDD(ダイオキシン)が、旧アメリカ軍基地としてのダナン空港内の土壌だけでなく、空港に隣接する湖の堆積物をも汚染し続けていることを示した。 (北村註:空港近くを流れる小川の写真は、前回に載せてあります)

ハットフィールルド社は研究の中で、「土壌」と「湖の沈殿物」から「魚とカモの脂肪」「人間の血液」と「母乳」を、食物連鎖を通してその動きを追跡するためのTCDDの化学的指紋の役として使ってきた。

ハットフィールド社のトーマス・ボアヴァン社長はこう話している。

我々の仕事は、これが対処可能な問題であることを示している。我々は、今、汚染源を突き止めた。我々は、浄化作業に取りかかるために、国際的な財政援助を必要としている

戦争終結以来、米環境保護局、医学研究所、そして何百という科学的研究は、TCDDと多数の癌や他の疾病との関連性を指摘してきたところだ。(つづく)Posted by Picasa

2009-11-07

ハットフィールド社の調査結果

ハットフィールド社(1) 

最新のエージェント・オレンジ(ヴェトナム)の調査結果が、第4回米越合同諮問委員会に提出されました。
今回から3回にわたって、ハットフィールド社関連のニュースを掲載します。

【ダナン】ハットフィールド社とヴェトナム政府は、ダナン空港(ヴェトナム)におけるダイオキシン汚染の総合評価の結果を、環境レベル、人体の曝露、被害緩和対策の選択肢研究と題して、9月8日に行われた第4回エージェント・オレンジ/ダイオキシン米越合同諮問委員会に提出した。
この委員会へ提出にともなって、ハットフィールド社の研究は、AFP及びAP通信によって、シカゴトリビューン紙に報道された。
エージェント・オレンジ旧貯蔵地域・ダナン ハットフィールド社撮影
上の写真は、ダナンが米軍基地だった時に、エージェントオレンジを貯蔵していた所の近くを流れる小川です。この水源一帯が重度に汚染されているのでしょうか。

この会議への提出にともなって、ハットフィールド社の研究は、AFP及びAP通信によって、シカゴトリビューンに報道された。

1994年以降、ハットフィールド社は環境と人間社会におけるエージェント・オレンジ/ダイオキシンの影響を評価、軽減するために、ベトナムで主要な有毒化学管理計画を実施してきた。

ダナン空港でダイオキシン汚染の高レベルが記録されたことから、この場所が、米越両国政府の主要な研究対象地域となった。

過去5年にわたって、ハットフィールド社は、国家運営委員会(33委員会)、ベトナム国防省とヴェトナム-ロシア熱帯研究センターVRTC)の支援を受けて、空港の内外でエージェント・オレンジ汚染の総合的な評価を実施した。

その評価は、環境及び人間の体組織のサンプリングと人間の健康調査を対象とした。研究結果に基づいて、汚染地域の完全な改善計画を実施する前に汚染曝露を軽減するために、ハットフィールド社と33委員会は、いくつかの緩和対策が勧告した。

この地域におけるハットフィールド社の作業は、国際社会からヴェトナムのダイオキシン曝露に関する最も総合的な調査と認められた。その報告書は入手可能である。

ダナン報告を入手希望は圧倒的な数にのぼった。その結果、ハットフィールド社は、関心ある団体には、自社のサイトから完全な報告書をダウンロード出来るようにした。
サイトのURLは: hatfieldgroup.com/about+us/newsdb.aspx?nid=52

ダナン空港(ヴェトナム)のダイオキシン汚染の総合評価のコピー:環境レベル、人体への曝露、そして影響緩和の選択肢に関する報告書は、ハットフィールド社のウェブサイトで10月初めに入手可能となる。(北村註:11月6日現在、アクセスできていない)

ハットフィールド社のNews RSSへの配信か、電子メールを通してハットフィールド社ニュース最新版を受けられる。

ハットフィールド社のエージェント・オレンジの調査をさらに知りたい人には、ハットフィールド社の進行中のエージェント・オレンジ対策専用のウェブページもある。(了)

ハットフィールド・コンサルタント社(ハットフィールド)のご紹介をしておきましょう。
                          
1974年設立。南北アメリカ、アジア、ヨーロッパとアフリカで1,500以上のプロジェクトを引き受けてきたカナダの環境コンサルタント会社。ハットフィールド社は、環境評価とモニタリング、汚染物質監視、GIS(地理情報システム:地図上に様々な情報を重ね合わせ表示・検索・分析などを行うシステム)と遠隔探査(環境情報システム、水生の生態環境と生物多様性評価)の分野で情報提供をしている。
                           
(この項 次回につづく)Posted by Picasa

2009-11-06

英越友好協会のレン・アルディスさん

枯れ葉剤被害者の正義を呼びかける
レン・アルディス氏
「アメリカは、ベトナム人のエージェント・オレンジ被害者に、責任と補償を負わなくてはならない」 先月10月25日のホーチミン市で200人以上の学生を前に英越友好協会事務局長のレン・オルディス氏は、こう語った。

レン・オルディス事務局長は、ベトナムのエージェント・オレンジ犠牲者の支援を希望する人々から署名を集めることを目的にしたウェブサイトhttp://www.petitiononline.com/AOVN/petition.htmlを開設した人です。
この学生会合に出席したすべての参加者は、エージェント・オレンジ/ダイオキシンの化学物質の被害に苦しむ子供たちがどういう運命におかれているか、アルディス氏が収集した文書に心を動かされた。
アルディス氏は学生にウェブサイト上で署名してくれるように求めた。そして、エージェント・オレンジの被害者の正義を求め、また被害者を訪問し、面倒をみるというような活動に参加するように呼びかけた。
オルディス氏は、ホーチミン市在住の枯れ葉剤被害者グエン・ドゥックさん(日本で言うべトちゃん、ドクちゃんのドゥックさん)が書いた手紙を引き合いに出した。 その手紙には、「私はサダムフセインが化学兵器を使ったことを理由にアメリカが絞首刑に処したことに、一種の矛盾を感じます。では、もう一つの国での戦争中に、アメリカは化学物質を撒布し、依然としてアメリカは責任を逃れています。アメリカはベトナムのエージェント・オレンジ被害者に対して、その責任を負い、補償しなければなりません。これは、遅かれ早かれ為されなければならないことです」と、書かれている。
アルディス氏と子供たち

実は、レン・アルディス事務局長は、ベトナム枯れ葉剤被害者協会の名誉会員です。その式典が、2007年6月12日に行われた。

レン・アルディス英越友好協会事務局長氏は、名誉会員になった喜びを表明した。彼は、「VAVA(ベトナム枯れ葉剤被害者協会)の活発な努力が、ヴェトナムで環境と人々にひどい影響を及ぼしているエージェント・オレンジの結果に対して、国内及び国外での関心をますます高めている。エージェント・オレンジの被害者を支援する人々も、VAVAが大健闘していると認めている」と、賛辞を送った。
                       
レン・アルディス氏(76)の初のベトナム訪問は、1989年。それ以来、彼は多くの活動を行ってきた。そして、VAVAグエン・チョン・ニャン副会長は、「多くのベトナム人以上に多くの仕事をやってきた。被害者の日常生活と、正義のための闘争において、エージェント・オレンジ被害者を助けてきた」と認める。

ニャン副会長は、被害者支援のためにレン氏が考え出した名案をリストにするととても時間がかかるほどだと言った。
                            
レン氏はイギリス国内の大学で講演をし、ヴェトナムにおける枯れ葉剤被害者のフィルムも上映した。彼は、被害者の支援に向けて、英国の議員にも動員をかけた。

彼のウェブサイトには世界中の70万人以上が署名していた。私も、署名した。それは、予想をはるかに上回る数字だった。このことは、彼のひたすらの忍耐が、多くの人々にエージェント・オレンジとその深刻な結果を浸透させたことを物語っているのではないか。
被害者を支援するわれわれを含めて大いに啓発を受けるものである。そして、日本の日越議連の先生方・・少しは力になってあげたら・・と強く思うのである。Posted by Picasa

2009-11-05

遠い戦争の遺産

昨日、翻訳記事を載せて、ふと一つの記事を思い出しました。それは、2007年3月14日付けのタイムズ誌に載ったウォルター・アイザックソン記者の記事です。あの当時から、少しの進展はありましたが、2年の歳月をかけるに値する進展だったのかどうか、改めて問われます。
この2007年の記事と、昨日掲載した記事とを読み比べていただければ、幸甚です。

遠くの戦争の遺産
Thursday, Mar. 01, 2007 ウォルター・アイザアックソン 
タイムズ誌(3月14日号)
(日付が違うのは、スペン研究所の機関紙からとったものだからです)


身ぎれいにしなさい。私たちが若い頃に学んだ一つの教えだ。アメリカがヴェトナムから撤退して30年以上がたった。その教えを守る時がきた。最近のヴェトナムでは、他の多くの国と違って、国民も指導者もアメリカに対して、概して友好的である。ヴェトナムは、WTO(世界貿易機関)に加入したばかりだ。そして、アメリカはその最大の輸出市場であり、対外投資の相手国である。インテルは、ホーチミン市近郊で10億ドルを投入してチップの製造工場を建設している。


ひと世代前、われわれは、今日のイラク戦争とほぼ同じくらい扱いにくいようにみえたヴェトナムでの戦争で行き詰まっていたので、そのことには元気づけられる。それはまた、人類の大義でもある。なぜなら、ドミノは必ずしも予想通りに倒れないということ示しているからだ。共産主義者がヴェトナムで勝利を収めた後、彼らはカンボジアと続いて中国の共産主義者との戦いに入った。


しかし、い
まだ1つの悩ませる傷がある。ベトナム戦争中に、アメリカは2000万ガロン近いエージェント・オレンジ(森林を枯らし、ダイオキシンを残した除草剤)を撒布した。また、エージェント・オレンジが使われたか、それを保存した28の汚染地域を残していった。そこでは、エージェント・オレンジが使用されたか貯蔵されていたかだが、適正に保管されていなかった。ベトナム人は、ダイオキシンが筋肉や骨格障害、精神遅滞のような先天性欠損症のような障害は、ダイオキシンが原因だと主張している。ハノイ大学での研究は、ダイオキシンにさらされた人々の間で、これらの問題がより高い発生率を示している。

私はちょうど今フォード財団が後援するアスペン研究所の2
人の同僚とヴェトナムの南北の旅行から戻ったばかりだった。そして、スーザン・べレスフォード会長、チャールズ・ベイリー・ヴェトナム事務所長の下で、アスペン研究所は、エージェント・オレンジ問題の実際的な解決法の発見に努めている。旧アメリカ空軍基地でだったダナン空港周辺地域では、高水準のダイオキシンが探知された。私たちは空軍基地周辺の不毛地帯を歩いて、一つの池のそばの住宅に行った。その池は、数度の試験で毒の濃度が示されたため、遅ればせながら魚釣り禁止の処置をとった。

これらの健康問題に対する責任は、あまりはっきりしていない。アメリカ軍が特別に多量撒布したダナンの南部にある比較的平坦なクアンガイ省では、ベトナム政府によって公式に、ほぼ15,000人の住民がダイオキシン被害者と分類された。北海岸に沿って、私たちはまた、北部海岸沿いにタイビン省に行った。タイビンは撒布地域からかなり離れた所だが、多くの男性が出征して戦った。そして、次世代で高い発生率で先天性欠損症が生まれている。


科学者は、エージェント・オレンジと各種障害との直接的な関連性を証明することが出来なかった。そして、アメリカとベトナムの当局同士も、コンセンサス作りへの試みは成功しなかった。実際、もし双方が科学的証拠を待つと言って譲らなければ、問題解決のための努力は麻痺したままになろう。


実際的で分別のある解決法は可能である。アメリカは、即時に、汚染された地域を囲み、それから浄化作業をすべきなのだ。詰まるところ、われわれは、混乱を作り出してしまった。帰任間近のマイケル・マリン米大使は、フォード財団の補助をうけて、アメリカ政府からわずかな額の資金を獲得することができた
。そして、このプロセスを始めた。

健康問題に関しては、罪や法的責任を問う必要はない。それは、補償問題としてよりは、むしろ人道問題として取り上げることが可能だからである。タイビン省からクアンガイ省まで、リハビリテーションセンター、健康クリニック、家族のカウンセリングの必要と、普通の学校に行くことができない子供の被害者のために教育の必要がある。義務感と礼儀の精神からも、米国政府の援助計画と民間の慈善事業は、ベトナム戦争の最後に残る問題を解決するために前進させるものでなければならない。


ここ数月にわたって、去年8月のヴァニティー・フェアでクリストファー・ヒッチェンス記者とジェームズ・ナックウェイ・カメラマンによる情け容赦のない生々しい記事も含めて、アメリカ国内ではこの問題に関する一般の認識は高まりをみせた。ブッシュ大統領が11月にヴェトナムを訪問したとき、彼が用心深くベトナムのグエン・ミン・チエット大統領と出した共同声明は「旧ダイオキシン保存地域周辺での環境汚染に触れる」必要性と、「障害をもつベトナム人に・・・人道支援のために」触れる必要があった。もし、議会と国防総省はこの計画に取り組むことを選択するなら、この6月にチエット大統領が訪米する頃には、彼らはこの重要な問題の解決へ向けて長い道を歩み始めることができるのだが。


それ至ってこそ、アメリカは最終的にベトナム戦争の最終章を閉じて、仇敵をしっかりした同盟国に変える事ができるだろう。そして、この問題に対処することは、我々の価値観に従って暮らし、基本的なマナーを示すことが、実際、心と精神を射止める最上の方法であることを我々に思い出させるのだ。

2009-11-04

ダウに呼びかけよう

ベトナム枯れ葉剤被害者全国組織の枯れ葉剤被害者協会のグエン・チョン・ニャン副会長から送られてきた資料を、翻訳の上、掲載しました。送られてきたのは、10月28日です。


エージェント・オレンジに関する国際企業告発キャンペーン
ダウ・ケミカル  正しいことをせよーベトナムのエージェント・オレンジ被害者に保証せよ

ダウが約束する企業責任はどこに?

ダウケミカルは、水危機の解決に邁進することを詠って「人間の視点に立つ企業」と自己宣伝している。同企業の製品であるエージェント・オレンジは、科学の世界では最も有毒な物質、ダイオキシンを含んでおり、ベトナムにおける重度汚染地帯では、水と土地に害毒を与え続けていることも含めて、3世代以上も続く人間と生態学的な破壊を引き起こしている。



エージェント・オレンジはダウの責任

何百万リットルというエージェント・オレンジと他の有毒化学物質は、ヴェトナム戦争中にベトナム領土に散布された。化学企業は、当時、枯れ葉剤が人体に有毒であるということを知っていた、かつ、彼らは企業利益擁護のためにダイオキシン除去処置を講ずることをあえてしなかった。1961年から1971年までの間、ダウはヴェトナム領土に死を振り撒き、環境破壊をもたらすことで何十億ドルという利益をもたらした。

ダウ: 非人間的な要因は、ヴェトナムで水危機の原因となる!

これは、彼らの主張だ。
                 
冷酷な結果 – 病んだ世界
300万人以上のベトナム人が、エージェント・オレンジによって死亡したり、疾病にかかるか、障害を引き起こされた。
エージェント・オレンジは、散布を受けた人たちの第2第3世代の子どもに、死、ガン、呼吸器系統の疾病、生殖機能の疾病と重大な先天性欠損症を引き起こす。
エージェント・オレンジベトナムのあちこちで、環境や生態系を毒した。
ダウは、人間の肉体を焼くナパーム弾も製造した。
ダウはインドのボパールで起きた爆発で受けた何千人の苦しみに対しても責任がある。それは、1984年の工場事故で飛散した土地と水の中の有毒化学物質の浄化をすることを拒否したからた。
モンサントは「ラウンドアップ」という殺虫剤の使用を通じて毒物を拡大し、世界の極貧国へ食糧の種を配ることにより食物持続性を機器にさらした危険にさらしている。
ダウは、アメリカと世界各地の自己の工場周辺で、土地と水に毒物で汚染している。
共同行動をとろう! ダウに被害者への責任を果たすよう要求しよう!
 ダウに呼びかけよう:ヴェトナムのエージェント・オレンジ被害者に補償と援助を提供することで、戦争の傷を癒やせと。
 ヴェトナムに作られた重度汚染地帯には致命的な化学物質が環境の中に留まっており、その汚染地帯の浄化をダウに要求しよう。
 それがエージェント・オレンジの被害を受けている米国、カンボジア、ラオス、韓国、オーストラリア、ニュージーランドとカナダの人々に補償する義務があることをダウに呼びかけよう。
 ボパールの環境浄化をせよとダウに訴えよう。

Vietnam Agent Orange Justice committees are forming in the U.S., and across the world

ベトナム・エージェント・オレンジ被害正義者の正義を訴える委員会は、アメリカや世界各地で誕生している。

以上が、送られてきた全文です。一層の理解を深めていきたいと考えますが、いかがでしょうか。 

上記にありますボパール事故について、ウィキペディアから引用しておきます。


ボーパール化学工場事故は1984年に発生した世界最悪の化学工場事故である。インドのマッディヤ・プラデーシュ州の州都ボパール で操業していたユニオンカーバイド社(当時)の子会社の化学工場から約40トンのイソシアン酸メチル (MIC) が流出し有毒ガスが工場周辺の町に流れ出した。この有毒ガスは肺を冒す猛毒である。

事故は12月3日の深夜に発生した。スラムであったため、人口密集地であったことと夜だったために逆転層が生じ、有毒ガスが拡散しなかったことにより有毒ガスでその夜のうちに2000人以上が死亡し、15–30万人が被害を受けた。数ヶ月以内に新たに1500人以上が死亡し、最終的に、様々な要因で1万5000人~2万5000人が死亡したとされる。

現在もなお工場から漏れ出した化学物質による周辺住民への健康被害が続いている。また、工場を管理していたユニオンカーバイド社への訴訟や責任問題が未解決である。

北村 元