2009-11-05

遠い戦争の遺産

昨日、翻訳記事を載せて、ふと一つの記事を思い出しました。それは、2007年3月14日付けのタイムズ誌に載ったウォルター・アイザックソン記者の記事です。あの当時から、少しの進展はありましたが、2年の歳月をかけるに値する進展だったのかどうか、改めて問われます。
この2007年の記事と、昨日掲載した記事とを読み比べていただければ、幸甚です。

遠くの戦争の遺産
Thursday, Mar. 01, 2007 ウォルター・アイザアックソン 
タイムズ誌(3月14日号)
(日付が違うのは、スペン研究所の機関紙からとったものだからです)


身ぎれいにしなさい。私たちが若い頃に学んだ一つの教えだ。アメリカがヴェトナムから撤退して30年以上がたった。その教えを守る時がきた。最近のヴェトナムでは、他の多くの国と違って、国民も指導者もアメリカに対して、概して友好的である。ヴェトナムは、WTO(世界貿易機関)に加入したばかりだ。そして、アメリカはその最大の輸出市場であり、対外投資の相手国である。インテルは、ホーチミン市近郊で10億ドルを投入してチップの製造工場を建設している。


ひと世代前、われわれは、今日のイラク戦争とほぼ同じくらい扱いにくいようにみえたヴェトナムでの戦争で行き詰まっていたので、そのことには元気づけられる。それはまた、人類の大義でもある。なぜなら、ドミノは必ずしも予想通りに倒れないということ示しているからだ。共産主義者がヴェトナムで勝利を収めた後、彼らはカンボジアと続いて中国の共産主義者との戦いに入った。


しかし、い
まだ1つの悩ませる傷がある。ベトナム戦争中に、アメリカは2000万ガロン近いエージェント・オレンジ(森林を枯らし、ダイオキシンを残した除草剤)を撒布した。また、エージェント・オレンジが使われたか、それを保存した28の汚染地域を残していった。そこでは、エージェント・オレンジが使用されたか貯蔵されていたかだが、適正に保管されていなかった。ベトナム人は、ダイオキシンが筋肉や骨格障害、精神遅滞のような先天性欠損症のような障害は、ダイオキシンが原因だと主張している。ハノイ大学での研究は、ダイオキシンにさらされた人々の間で、これらの問題がより高い発生率を示している。

私はちょうど今フォード財団が後援するアスペン研究所の2
人の同僚とヴェトナムの南北の旅行から戻ったばかりだった。そして、スーザン・べレスフォード会長、チャールズ・ベイリー・ヴェトナム事務所長の下で、アスペン研究所は、エージェント・オレンジ問題の実際的な解決法の発見に努めている。旧アメリカ空軍基地でだったダナン空港周辺地域では、高水準のダイオキシンが探知された。私たちは空軍基地周辺の不毛地帯を歩いて、一つの池のそばの住宅に行った。その池は、数度の試験で毒の濃度が示されたため、遅ればせながら魚釣り禁止の処置をとった。

これらの健康問題に対する責任は、あまりはっきりしていない。アメリカ軍が特別に多量撒布したダナンの南部にある比較的平坦なクアンガイ省では、ベトナム政府によって公式に、ほぼ15,000人の住民がダイオキシン被害者と分類された。北海岸に沿って、私たちはまた、北部海岸沿いにタイビン省に行った。タイビンは撒布地域からかなり離れた所だが、多くの男性が出征して戦った。そして、次世代で高い発生率で先天性欠損症が生まれている。


科学者は、エージェント・オレンジと各種障害との直接的な関連性を証明することが出来なかった。そして、アメリカとベトナムの当局同士も、コンセンサス作りへの試みは成功しなかった。実際、もし双方が科学的証拠を待つと言って譲らなければ、問題解決のための努力は麻痺したままになろう。


実際的で分別のある解決法は可能である。アメリカは、即時に、汚染された地域を囲み、それから浄化作業をすべきなのだ。詰まるところ、われわれは、混乱を作り出してしまった。帰任間近のマイケル・マリン米大使は、フォード財団の補助をうけて、アメリカ政府からわずかな額の資金を獲得することができた
。そして、このプロセスを始めた。

健康問題に関しては、罪や法的責任を問う必要はない。それは、補償問題としてよりは、むしろ人道問題として取り上げることが可能だからである。タイビン省からクアンガイ省まで、リハビリテーションセンター、健康クリニック、家族のカウンセリングの必要と、普通の学校に行くことができない子供の被害者のために教育の必要がある。義務感と礼儀の精神からも、米国政府の援助計画と民間の慈善事業は、ベトナム戦争の最後に残る問題を解決するために前進させるものでなければならない。


ここ数月にわたって、去年8月のヴァニティー・フェアでクリストファー・ヒッチェンス記者とジェームズ・ナックウェイ・カメラマンによる情け容赦のない生々しい記事も含めて、アメリカ国内ではこの問題に関する一般の認識は高まりをみせた。ブッシュ大統領が11月にヴェトナムを訪問したとき、彼が用心深くベトナムのグエン・ミン・チエット大統領と出した共同声明は「旧ダイオキシン保存地域周辺での環境汚染に触れる」必要性と、「障害をもつベトナム人に・・・人道支援のために」触れる必要があった。もし、議会と国防総省はこの計画に取り組むことを選択するなら、この6月にチエット大統領が訪米する頃には、彼らはこの重要な問題の解決へ向けて長い道を歩み始めることができるのだが。


それ至ってこそ、アメリカは最終的にベトナム戦争の最終章を閉じて、仇敵をしっかりした同盟国に変える事ができるだろう。そして、この問題に対処することは、我々の価値観に従って暮らし、基本的なマナーを示すことが、実際、心と精神を射止める最上の方法であることを我々に思い出させるのだ。

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