2008-02-10

また蓮のお話~ベトナム民話~

昔々、ある年寄りが、二人のみなし児を育てていました。二人とも女の子です。
お爺さんは、二人に歌とダンスを教えました。二人が16歳と14歳になった頃には、美しさと才能で、あちこちに知られるようになりました。

二人には血のつながりはありませんでしたが、姉妹として仲良くしていました。
ある日、妹が病気になりました。
村で一番の医者を呼び、治療を受けました。しかし、何も出来ませんでした。

「お父さん、どうか、私に助けさせてください」と、姉が頼みました。彼女は、ポケットからある薬草を取り出しました。「これはお婆ちゃんからもらったもの。これを燃やして、灰を水と一緒にまぜます。この薬を飲めば、妹は治ります」

この薬を飲むと、妹は治りました。「お姉さんが救ってくれたのね。でも、お姉さんが病気になったら、誰が救ってくれるのでしょう」と、妹は言いました。

高級官吏の息子が、それほど遠くないところに住んでいました。彼は、癖の悪いことで知られていました。この悪人は、自分の用兵に美しい女性をさらってくるように命じました。この美人の姉妹の話を聞いて、どら息子は、この美人姉妹を捕まえるために兵を送りました。

そんな危険のことなど知るすべもないお爺さんは、大きな町まで旅をする計画しました。
「何を持って帰ってもらいたいかな?」と、老人は姉妹に聞きました。
姉は、「金の糸で刺繍した白のスリッパがいい」と、言いました。
「私は金の糸で刺繍したピンクのスリッパがいい」と、妹はおねだりしました。

老人が家を出るとすぐ、兵士が家に入ってきて二人の姉妹を捕まえました。
姉妹は小舟に乗せられ、官吏の家まで連れて行かれました。園家は、湖の中央にある島にありました。妹は、首からぶらさがっている小さな袋をとって、姉に渡しました。「これは、私の母からもらったものよ。危険から守ってくれるの。貰っておいてください」

官吏の家に着くと、姉は、どら息子の部屋に連れて行かれました。どら息子が姉の体に触れようとしたときに、どら息子の足の力がなくなり、倒れて意識を失いました。彼が起きあがって、妹を捜そうとしましたが、何回も同じ事がおきました。
逃げ場が無くなった妹は、川に飛び込んで溺れました。

妹が飛び込んで死んだのをみて、姉は哀しみと罪の意識で悲嘆に暮れ、彼女も又川に飛び込みました。
兵士が、二人の遺体を探しましたが、みつかりませんでした。

娘がさらわれたと聞いて、その年寄りは、湖に急ぎました。そこで、二人とも死んだことを知りました。
老人は、娘達のために買ってきたスリッパを土手において、祈りのために跪きました。湖の畔にすわると、素晴らしい香りに気づきました。

月明かりの中に、湖面から出てきた二つの不思議な花をみました。一つの花はピンク、もう一つは白でした。その花びらは、シルクのスリッパの形をしていました。
そして、雌しべは、娘たちのあたらしいスリッパを飾る糸と同じような金色でした。葉は、娘たちがいつもかぶっていた平らなシュロの葉に似ていました。二人の娘が姿を変えて美しい花になって、自分をなぐさめているのだと、老人は思いました。
老人は、あの世の贈り物として受けて貰いたいと願った。「小俣地よ、私の祈りの声が聞こえるなら、どうか私の前にあらわれてくれないか、二人がいなくなって淋しいよ」と、言いました。

甘い香りの波が老人を押し流して、二人の娘が現れました。姉が言いました。
「湖の女王が救ってくれたのです。女王は私たちを非常に可愛がってくれました。あなたが悲しんでいる姿をみて、女王はあなたの元に帰してくれました。私たちのことを忘れないように、女王は湖面一杯にこの花を敷き詰めたいといいまいた」

家路につく前に、老人と二人の姉妹は、湖の女王に感謝の気持ち表しました。
3人が祈っていると、湖面には、厚いピンクと白をした絨毯が敷かれました。以後、この湖は香湖として知られるようになりました。この花は蓮と命名され、純粋さの象徴となりました。Posted by Picasa

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