2007-07-06

枯れ葉剤被害者 巨大企業に挑戦

枯れ葉剤エージェント・オレンジ のベトナム人被害者による裁判の事前ヒアリングが6月18日、米国第二巡回控訴裁判所で行われた。これは、重要な裁判になるので、すこし触れておきたい。まずは、6月16日に行われた集会から。

6月16日、枯れ葉剤被害者運動は、マーティン・ルーザー・キング・ジュニア・労働センターで行われた。ベトナム枯れ葉剤被害者歓迎式典をおこなった、式典には、予想外の人数が参加した。

 左の写真は、ハイフォン市から駆けつけたグエン・ヴァン・クイさん。彼は、北ベトナム軍の旧兵士で、エージェント・オレンジに曝露した。現在、複合ガンの末期症状で、重い障害をもった子ども2人がいる。
改めて、こんなに若さがあるのだとびっくりした。本当は、若いお父さんなのだ。

「われわれは、エージェント・オレンジが後の多くの世代に悪い影響と結果を与えていることをアメリカ市民に伝える必要がある」と語った。
  
 私たちは、クイさんの家に支援をしている。よく、ニューヨークまで行った、と。「一言でも訴えなくてはならない」という気持ちで行った。

 ベトナム側からは、グエン・ティ・ホンさん(60歳)、グエン・ムロイさん(24歳)、ヴォータイン・ハイさん(48歳)、グエン・ヴァン・クイさん(52歳)が、涙ながらに訴えた。最年少のムロイさんは、両親がダイオキシンに曝露したこと、他の3人は、発症した恐ろしい病気と暮らしていかなくてはならない困難な生活の現状を必死に訴えた。

 さて、ベトナム戦争中に広範に枯れ葉剤として撒かれたダイオキシン混入の化学物質を製造した農薬メーカーに補償を求めた2007年6月18日、ニューヨークの連邦裁判所前には、多くのベトナム枯れ葉剤被害者ための支持者が集会にきた。 

 アメリカの復員軍人、エージェント・オレンジのベトナム人被害者そして反戦活動家らは、人体に有害として知られているのに化学戦争物質を供給したとしてダウ・ケミカルモンサントなどの会社を非難した。

 「企業は自らの犯罪にカネを払え」「ベトナム・エージェント・オレンジの生存者に正義を!」などいうプラカードをもっていた。(上の写真)

 同時に、南ベトナム出身の反対派は、南ベトナム政府の旗を振って、正義を求める枯れ葉剤の被害者やその支持者に罵声を浴びせていた。この人たちは、ワシントンやバージニアからバスでやってきたり、中にはパリから飛んできた人もいた。

 これらの人は、未だにサイゴン政権の支持者でもある。サイゴン政権は、アメリカ軍の大規模な軍事介入にもかかわらず崩壊した不人気の政権だった。道行く人は、戦後30年経っても絶えない化学戦争の結果の説明に関心言葉を名前を聞いたことがないという人々だった。  

 労働者組織の人は、エージェント・オレンジ被害者運動のゴ・タイン・ニャン氏に質問した。「なぜ、この反対派の人たちは、自分の故国で300万以上の被害者を出しことに賛成しているのか?」と。

 ニャン氏は答えた。「彼らは、ベトナム政府が共産主義者だと思っているからです。彼らは共産主義に猛烈に反対していましたので、人々が病気に苦しんでいても構わないんです」

これは、ベトナム戦争中にエージェント・オレンジをアメリカ軍に供給したとして、Dow Chemical、Monsantoの巨大会社ほか、35社の農薬メーカーを相手取って、300万人以上のベトナム人被害者を代表して「ベトナム・Agent Orange/Dioxin 被害者協会」が行った集団訴訟で、これを却下した下級審の決定を不服としてベトナム側が連邦裁判所に控訴したものだ。

これら化学会社はベトナム戦争中にエージェント・オレンジを米軍に供給し、広範なダイオキシン被害をもたらした直接の責任があるとし、数十億ドルの補償とベトナム汚染地の環境浄化、医療検診、支援を求めている。原告らは、ダイオキシン汚染で、数十年たってガン、奇形、臓器機能不全などを引き起こしているとして、補償を求めている。 


原告側弁護士のジョナサン・ムーアは、「農薬メーカーは、ダイオキシンを含んだエージェント・オレンジは有害であることを知っていたが、何もしなかった。彼らはどういう風に使用されるかも知っていた。その影響が災害的な物になることを信じる理由も知っていた。そして、彼らは作った。何年から経って、われわれは、今、その恐ろしい製品の結果を目の当たりにしているのだ」と、語った。

控訴裁判のヒアリングで、判事は、戦争で使われた毒物が直接人を殺すためではなく、数年後に被害が出たという場合、国際法に違反していないのではないかと発言した。 

第2次世界大戦後数年たって行われた裁判では、ナチの死のキャンプで使用されたツィクロンBガスのメーカーは有罪になった。    そういう前例にも、判事は微動だにしなかった。これらの裁判とはケースが違い、戦争中に使用された毒が人々を殺すことを直接狙ったものかどうか、数年後に被害がでただけでは、国際法に違反しているかどうか疑問だと、判事はした。ロバート・サック判事は、「違った状況ではないのか?殺すために或いは危害を与えることを狙った毒なのか?」と発言した。

 会社側の弁護士も戦争での毒物の使用で罰せられた前例はなく、判事が本件を取り上げた場合、戦場での意思決定に影響を与えると警告した。イラクでの劣化ウラン弾の使用に触れ、現実の外交に影響を与えるとした。

戦争中に毒物の使用を承認した大統領の責任も問題になるが、原告側はアメリカ大統領は免責特権により訴訟の対象としていない。

 シース・ワックスマン全米弁護士会前総長(左)は、枯れ葉剤製造メーカーの立場に立って、戦争で毒物を使用したことに対する懲罰をする先例が不足している事を指摘し、もし裁判官がこの訴訟を進められるということになると、アメリカの戦場での決定に支障を来すことになると警告した。

 アメリカがイラクで使用した劣化ウラン弾の使用を例にあげ、「これは、われわれが進めている外交政策に障害となる」と語った。

 判事が本件を取り上げるかどうかの決定をするまでに数ヶ月かかるとみられる。本件が取り上げられ場合でも、判決が出るまでに数年はかかると見られている。

1984年には、7社が、法廷外で、エージェント・オレンジがガンなどの健康障害を引き起こしたと主張するアメリカ復員軍人と1億8千万ドルの支払いで和解した。 

 アメリカは、戦時の撒布とベトナムが主張する3百万人以上が3世代に渡ってダイオキシンによる障害で苦しんでいるとの間には科学的に証明された関連はないといいう態度を取っている。

 米軍は、ベトナムの穀倉地帯とジャングル地帯の壊滅を狙って、1961年から1971年までに南ベトナムの550万エーカーの土地に繰り返し枯れ葉剤エージェント・オレンジを散布した。その量は、1800万ガロン以上に及ぶ。この結果、米軍とベトナム人双方に多くの被害が出ている。

 1984年の和解の結果、ダウ・ケミカルとモンサント など7社は被害を受けた米軍人に対して1億8千万ドルの補償を行った。米政府も毎年15億ドルの予算で、対象者に補償を行っている。

 しかし、ベトナム人については全く補償のないままである。Posted by Picasa

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